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山行記録 カレンダー
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blogmaster 2015-12-20 23:50
日程:2015年12月20日
山域:八ヶ岳 横岳西壁 中山尾根
山行形態:冬季登攀

記録:
四時に起床し、早々に出発。美濃戸口から赤岳山荘までの状態は問題なく、車を上まで上げることが出来た。五時半頃には準備を済ませて南沢を歩く。所々凍ってはいるもののアイゼン不要の登りであった。七時半前には行者小屋に到着し、軽休憩と準備。

取り付きまでの尾根はそれほどの面白みはない。8時半前に到着し、ガチャ類の準備。2人組の先行パーティが1P目終了点あたりに見える。空気はそれなりに冷たいが風はあまりなく、周囲の山々の上空にはすかっとした青空が広がっている。
2人×2パーティに分かれて9時登攀開始する。

下部岩壁:1P目。T橋さんリードで登り始めるが1本目にヌンチャクをかけてクリップした後がむずい。何回かトライするが、F屋さんより交代するよう指示がありクライムダウン。過去に同じ場所で時間が掛かったこともあり、また後続パーティが到着したこともあり今回は早々の判断。K田パーティは最初はT後がリードであがる。2P目。直上するか左トラバースかだが、今回は直上。ここも出だしからむずい。F屋さんリードで、途中にはお助けスリングを垂らしながら。K田パーティはK田さんリード。
岩まじりの雪稜:ロープを目一杯伸ばして2ピッチ程度。途中コンテで進む。後続パーティの2人組は途中ノーザイルで進んだため、我々より先行する。
上部岩壁:先行した2人組が上部岩壁に取り付いており、我々はしばし待ち。抜け口が核心部とみられ、先行パーティもかなり難儀している。F屋パーティのリードはF屋さん。下から見ていると高度感もあり、特に抜け口の登りは体が投げ出されるような緊張感がある。K田パーティはT後がリードを譲ってもらい登る。F屋さんが抜け口まではスルスル登っているように見えていたので最後だけ気にしていたが、取り付いてみると下部の凹角部がいきなり「ここ登るのか」と思うような感じで緊張する。アイゼンの爪跡が要所要所にあるので、それを拾いながら手を丁寧に送ればそれほど悪くないことに気付く。抜け口は実にボルダー的なムーブで抜ける。
雪稜を抜けて、最後の岩場を直上。この岩場もやや腕力系でしかも残置支点がないのでこわい(この下の方まではペツルが大量にあったのに…)。上がりきったところからロープを目一杯伸ばして尾根の背を越えたところが登攀の終了点。14時前には両パーティ共に登攀を終えた。

ゆっくりと休憩をとり、14時40分ごろに下山開始。地蔵尾根を下り、15時15分頃には行者小屋に。ガチャ類やアイゼンを外し南沢を下山。17時20分に赤岳山荘に戻った。美濃戸口までの車での下りが心配であったが、道の状態はそれほど酷くなく問題なく下れた。
風呂に入ったあとは、いつもの「やまよし」。カツカレーが非常に美味しかったが、F屋さんは次回こそはまだ誰も食べていない「とのさまラーメン(塩味)」を食べるそうなので、その時のためにここに記録として残しておく。

<感想>
中山尾根はクライミング要素の多い登攀的なものだった。下部、上部と終了点手前で三箇所の岩場があり、丁寧に拾っていけば手足を置く場所はあるものの、ザックを背負いながらアイゼンと手袋での登攀は緊張を強いられる。途中上部岩壁の登りではかぶり気味な箇所もあり腕がややパンプ。個人的には岩場登攀よりもアプローチの歩きや雪稜の登りでの足への負担の方が疲れてしまったが、天候を気にすることもなく冬季の岩場登攀を充分に味わえた。
例年に比べ雪が少ないことで、バイルは雪稜の登りなどでは使用したが、岩場の登攀中に使うことはなく、むしろ腰にぶらさげても邪魔になることが多かった。雪が多い場合、岩場の登攀でもバイルを多用しなくてはいけないとなった場合、より緊張した登りになるだろうと思われた。


上部岸壁核心部

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blogmaster 2014-4-6 22:17

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blogmaster 2008-8-23 20:50
日程:2008年8月23日(土)?26日(火)
山域:槍ヶ岳 北鎌尾根
山行形態:岩稜
メンバー及び役割:木村(CL、食当、記録)、羽生田(会員外、SL)

記録:
8/24 中房温泉(6:00)?合戦小屋(8:10)?燕山荘(9:20)?大天井岳分岐(11:30)?大天井ヒュッテ(12:15)?貧乏沢下降点(12:55)?天上沢出合(14:55)?北鎌沢出合手前(15:40)幕営
8/25 北鎌沢出合(5:05)?右俣出合(5:30)?北鎌のコル北東のピーク(9:45)?コル(10:40)?2749mのピーク(12:00)?独標(14:10)?ビバーク地(16:45)
8/26 ビバーク地(5:50)?北鎌平(7:15)?槍ヶ岳山頂(9:15)?槍岳山荘(10:45)?上高地(16:05)

 8月23日夜、西新宿のバスターミナルに集合し夜行バスで穂高へ向う。天気予報はあまりよくない。8月24日4:00に穂高に到着、予約しておいたタクシーに乗換え中房温泉へ向う。かなり激しい雨が降っている。5:00には中房温泉に到着し、トイレの中で身支度を整える。次第に雨は小降りになり6:00にはなんとか出発することができた。今日は日曜日なので下山してくる人が多い。ザックにヘルメットをぶらさげているのを見て「北鎌ですか?」と声をかけられる。8:10には合戦小屋へ到着。名物のスイカを食べる。美味しい。燕山荘には9:20に着いた。この頃には天気もかなり回復し周囲の景色が少しずつ見えるようになってきた。ここからは大天井ヒュッテまで快適な縦走路だ。なぜかサルの大群が岩峰に集っている。

北アルプスでこういう光景を見るのははじめてだ。縦走路とはいえ荷物が重いのでなかなかつらい。休み休み歩を進め12:15に大天井ヒュッテに到着。この頃には晴れ間もみえはじめ、私達はなんてツイテルのだとはしゃぎあう。
 休憩後いよいよ貧乏沢下降点へむけて出発。7月に下見をしておいた下降点は「貧乏沢入口」という札がありとても分かりやすい。入ってみると踏み跡はかなりしっかりしているのでルートに迷うことなく降りられそうだ。

少し前に北鎌に行った古屋さん・中山さんのアドバイスどおり左岸沿いの巻き道を下っていく。下るほどにどんどん沢らしくなってゆき、天気もどんどんよくなって気持ち良く沢下りを楽しめた。約2時間ほどで天上沢出合に到達。天井沢は広く、北鎌尾根へ一歩近づいたこともあり興奮する。ここからは今日の幕営地を探しながら、できるだけ北鎌沢出合まで近づくことにする。キョロキョロしてるといくつか幕営可能な場所がある。なんとなく歩いていくと北鎌沢出合付近まできてしまった。ちょうどそこにロープを張って寝袋等を干している人がいた。その近くに良い場所があったので今夜はそこにテントを張ることにする。ザックを置いて北鎌沢を偵察し、先客に挨拶をする。ガイド志望の単独行で2日間北鎌のコルでビバークし今日下降してきたそうだ。かなり時間があるらしく今回の山行で2回北鎌尾根を登る予定だとか。世の中いろんな人がいるものである。
 テント設営後、焚火に取掛るがなかなか火がつかない。もたもたしている私達をみて、さっきのガイド志望の人が手伝いに来てくれた。それでも火はつかず、半ば諦めかけた頃、1時間ほどしてようやく火が点いた。焚火に関してはまだまだ授業料が必要だ。今晩のメニューは穴子寿司、たまごスープ、ウィンナー。夜になると霧が
立ち込めてきて明日の天気が少々気になる。20:00に就寝。
 8月25日3:00起床。ラーメンを食べ身支度を整える。5:00には出発し北鎌沢出合から沢を遡行していく。

しばらくすると二俣になる。あきらかに左俣のほうが水量が多いが、ガイドブック通り右俣に入る。1時間ほど遡行すると水流がなくなったので水を汲むことにする。コルの手前まで水が出ていると聞いていたが心配なので早めに水をとる。木村が3ℓ、羽生田さんが2ℓ確保した。右俣の最後の詰めは沢からはずれた踏み跡が歩きやすいと聞いていたので、それを探しながら歩く。少々早い気もするが右側に明瞭な踏み跡がでてきた。これではないかと思い進んでみる。どんどん上がっていくと正面の岩壁に新しい赤いシュリンゲがかかっていた。懸垂の支点のようだなと思いつつさらに登っていく。今思えばここで疑って引き返すべきだったのだ。中山さんからもシュリンゲのことがアドバイスされていたのに・・・。経験の浅い二人はやけに急になってくる斜面をずんずん進んでいった。すると岩と草付の急な壁に行き当たった。少し思案するも木の根にしがみつきながら前進する。ルートをはずれた事は認識しながらもうっすらと踏み跡があるのでこのまま行ってしまおうということになる。急な草付を恐る恐る登っていく。かなり冷や汗ものだ。支尾根までもう少し、最後のピッチはロープを出しようやく安定した場所に立つ事ができた。ここから約30分ほど藪こぎをして9:45ようやく北鎌の稜線に出ることができた。ヤッター!と妙な達成感と疲労感が。出てきた場所は北鎌コル北東のピークらしい。早くも今回の山行の核心部であった。少し休憩して気分を落ち着かせ北鎌のコルへ向う。途中懸垂下降を1回。コルはテント1?2張り可能な安定した場所であった。
さっきのルートミスで約3時間ほどロスしてしまった。

あせってもしょうがないので落着いてゆっくり歩くことにする。コルからは踏み跡も明瞭で(さっきのに比べるとホントに歩きやすい!)じわじわと高度を上げていく。12:00に2749mの稜線に出た。幕営できそうな場所はかなりある。ついでにゴミもたくさんある。稜線には出たが周囲はガスっていて展望はきかない。ルートがよく分からなくなったら稜線上を行こうと確認し、いよいよ岩稜帯歩きに突入。ここから先も踏み跡はわりと分かりやすく切れ落ちた岩稜のトラバースや少し難しいクライムダウンなどをこなしていく。




どの場所も一歩間違えれば奈落の底へ落ちていくので緊張感のある場面ばかりだ。やがて少し難しいチムニーを越え14:10独標に到着する。無理をすれば山頂までも可能そうだが、暗くなるとルートが分かりにくいのでどこかでビバークしてもいいかもしれない。
時折、オコジョやサルが顔を出し楽しませてくれる。この稜線上に私達二人しかいないというのも贅沢なものである。次々と現れる岩峰を巻いたり登ったりするも、だんだんと疲れがでてきてペースダウンしていく。16:45頃あるピーク直下の肩にテント1張り可能なスペースをみつけた。今夜はここでビバークすることにする。断崖絶壁の上だがテントの中に入れば暖かく居心地は良い。幸い風もなく小雨が時折ぱらつく程度で快適な一夜を過ごすことができた。水もかなり余分に持っていたので、米を炊き味噌汁、コーンビーフと葱の炒め物という豪華な夕食を食べることができた。
8月26日寝過ごして4:30に起床。スープとお茶を飲み行動食で簡単に朝食をすませる。行動用の水は1人500ml+α。ビバーク地を5:50に出発。ピークにいたのでいきなり急な下りからはじまる。天気はあいかわらず曇りだが視界は昨日よりひらけている。千丈沢側の巻き道を進んで行く。遠くから見ると難しそうな場所も近づくと案外無理なく登れる場所が多かった。7:15北鎌平に到着。この頃にはだいぶ雲が晴れてきて初めて槍の穂先を見ることができた。はるか先には西鎌尾根や硫黄尾根も見える。一晩ビバークした甲斐があったというものだ。
ここから先は稜線通しの岩塊地帯をゆく。まっすぐ聳える大槍の壁に一体どこを登るのかと思うが、ほとんど直線的に穂先へ向って進んでいけばよいみたいだ。残地シュリンゲをみつけ、そこが1つ目のチムニーであることが分かった。右側を巻くこともできそうだが、とりあえずチャレンジする。羽生田さんがまず登りシュリンゲを掴みながらうまくバランスをとってチムニーを越えた。次に木村の番。斜め左に向って2?3m程登ると足場があり、そこからシュリンゲを掴みながらトラバースするのだが、一歩踏出しだところでバランスが崩れこらえきれず落ちてしまった。落ちたのは2?3m程だが結構な衝撃でビックリしてしまった。そこで止まったから良かったものの、もっと下に落ちてたら大変なことだ。山頂を目前にして気が緩んでしまったのか、慎重さが足りずエイヤッで行ってしまった。かなり反省する。
体を動かしてみたら大丈夫そうだったので、もう一度チャレンジ。今度はお助け紐を出してもらい、なんとか登ることができた。続いて2つ目のチムニーを越える。こちらは慎重に行きなんなく越える。あとは階段状の岩を登るともうそこは槍の山頂であった。山頂からは周囲の稜線が良くみえる。長い道程であったがようやく山頂に立つことができた。いろんな事があったけど本当に来れてヨカッタと喜び合う。

槍岳山荘に下り、さっきの滑落でできた右膝のケガを応急手当し大休止する。バスの時刻を確認すると17:25上高地発のバスに乗れば今日中に東京に帰れるようだ。バスに乗りたい一心でかなりのスピードで下山する。足の裏が痛いが我慢して走るように降りていった。16:00過ぎに上高地に到着しビールで乾杯。バスと電車を乗り継ぎ予定通り東京に帰ることができた。

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blogmaster 2008-8-20 20:40
日程 2008年8月18日(月)?21日(木)
山域 北アルプス 槍ヶ岳/北鎌尾根
山行形態 岩登り
メンバー:古屋(CL・記録)、中山(SL・食事)白川(記録)
8/18
15:00京王線調布駅集合。古屋車にて中房温泉へ。途中穂高駅の近くで夕食を取る。
19:00頃、中房温泉の駐車場に到着。入山祝い中に突然下山者が現れて、穂高駅まで行ってもらえないかと頼まれびっくり。10分下ると温泉宿があるのでそこでタクシーを頼むことを勧める。テント泊。 
8/19
4:30起床。朝食、身支度を整えて5:20に駐車場を後にした。水くみ休憩をし、5:45 
登山開始。 6:10第1ベンチ、7:00第3ベンチにて小休止。7:55に合戦小屋到着。休憩中に雨が本降りになったため合羽を着るなどで時間をとった。高度計の数値が変化したとのこと。寒冷前線の通過を知る。8:20に出発。ここからは登山道の横に夏定番の花が見られるようになった。ジグザグの急登。その後少し緩やかになり、9:05に燕山荘に到着。休憩の後にそのまま大天井岳へ向かう。花崗岩の奇岩とコマクサ。風雨強く展望なし。稜線は比較的なだらかであったが、横風はいよいよ強くなり、防風体制をとることもしばしばあった。蛙岩の夏道は岩の左側を巻く。あちこちで沢ができ、水が勢いよく流れていた。
12:00に大天井ヒュッテに到着。天上沢での渓中泊を予定していたが、悪天候のため停滞を決める。夕方が近くになって天候回復。ヒュッテ裏の牛首山に登った。南には赤岩岳へ伸びる尾根と、その向こうに、頂上がガスに覆われた前穂?北穂。間近に硫黄尾根。さらに北には湯俣の高瀬ダムも見えた。北鎌尾根の稜線を一望し、身が引き締まる思いがした。

夕食はマーボー春雨とご飯。最初にベーコンを炒めて、つまみを作り、その油を主菜に使うとおいしくなるなど、料理のコツを中山さんに教えていただいた。19:00の天気予報で次の低気圧が近づいていることを知る。明日の午後までは天気が持ちそうなので、何とか雨が降り出す前に頂上にたどり着きたい。19:30頃就寝。
8/20
3:30に起床。湯を沸かし、朝食はラーメンとご飯。ラーメンにいれた大振りのチャーシューが美味しかった。しっかり食べて4:50にヒュッテを出発。小屋の主人からは午後に雷があるかもしれないと知らされた。
5:10貧乏沢入口に着き、藪の中を下降する。虫が多く、ヘルメットの中やザックにびっしりと付いていた。5:30貧乏沢到着。沢筋は風もないので、昨日の雨で岩もぬれていてすべる。急な下りで展望もない。足場が悪く、沢の左側に巻き道が出現したので、なるべくそちらを歩くようにした。
6:50 天上沢出合。休憩をとり7:05に出発。天上沢は河原が広い。上流に向かって左岸を進み、沢幅の狭いところで右岸に移ると、じきに北鎌沢の出合である。到着は7:20。20分休憩の後出発して、7:50に二股に到着。右俣に入った。ここは分岐がわかりにくくそのまま左俣に入ってしまう人がいるという。標高2066m位の地点で休憩、その後さらに沢が分岐しており、右へ行く。沢の上方に青空が開け、コルらしき物が見えるようになった。

2360mを過ぎたあたりで、さらに分岐。左右を迷いつつも、歩きやすそうな右俣に進む。途中2箇所で残置ハーケンとシュリンゲがあった。そのまま上り詰めると北壁。登ることは不可能ではないが上方はコル手前のピークであることが予想され、そこからのルートがどういうものかわからないので、分岐に戻ることにした。懸垂下降2ピッチ。残置があったのは、ルートを間違えて戻った人たちがいたからなのだと改めて気がつく。「低いところから流れる沢の水が一番太いのだから、鞍部を目指すのならば水量の多い左俣を行くべきだったのだ」と中山さん。経験豊富な方の言葉が重く響いた。1時間強のロスタイムをし、草付きの急登を上がると北鎌のコルであった。11:15に到着し休憩をとる。昨日の雨のため、沢は源頭付近まで水があった。コルにはテント一張分のスペースがあり。ビバークで使ったらしい銀マット、ブルーシートやゴミの袋が木に結び付けてあった。登山者のマナーの悪さが嘆かわしい。ここでの休憩中に『北鎌尾根では下りすぎず稜線を行く』という方針を確認した。草付きの稜線はハイマツの繁みに変り、天狗の腰掛を過ぎると独標が見えた。風が冷たくなってきたので合羽を着た。上空のガスが濃くなっていく。




14:00に独標に到着。稜線の先にピークが隠された頂が大きく見えた。槍ヶ岳がこんなに近いはずはない!しかし風でガスが飛ばされた瞬間に槍の穂であることがわかった。思ったよりも近そうだが、実は遠いのだと自らを戒める。基本的には千丈沢側を巻く形で進んだが、稜線の所々にはちょうどビバークできそうな広さのスペースがあって、登攀の困難さを思った。道はガレており、昨日の雨に踏み跡も消え、ルートを見つけるのに苦労する。懸垂下降をしたらしい残置シュリンゲが何箇所もあった。岩を伝って千丈沢側を探ると、下の方にさらに下降して大きく巻く道も見えたが、登り返しが大変であろうと考えてそのまま稜線近くを進む。ガレはますますひどくなり、ザレ場となり、足場が不安定で油断できない。浮石だらけなので、一足ごとに崩れる。急斜面のトラバースは四つんばい状態で体のバランスを保ちつつ進むこともしばしばあり、足取りも遅くなった。北鎌平あたりは千丈沢側を回り込む形ですすみ稜線に上がると、背後に槍がそびえていた。視界が悪いので、方向を誤る危険がある。さらに進むと大岩の岩稜が現れた。ガスは濃く、頂上もまったく見えないが、古屋さんに「自分たちはすでに槍の穂に向かっている」と励まされ、へばりかけた気持ちも引き締まった。初めての山であっても、頭にある地図と実際の地形、高度計の数値から、自分たちのいる場所を判断しているのだと気がつき、ルートを切り開くとはこういうことなのだ!と痛感した。険しい岩稜ではあるが手がかりや足場はしっかりしており、ロープは不要。チムニー通過後、やや天上沢側にルートを取り、最後の直登で山頂の祠の裏にでた。穂先到着は17:25。霧雨は冷たい雨にかわり、当然のことながら頂上には人気もない。眼下にあるはずの槍ヶ岳山荘も見えず、下降時には鎖も梯子もぬれていた。その後30分かけて殺生ヒュッテまで下り、天候悪化も予想されたので、中山さんに判断をいただいて素泊まりとした。小屋到着は18:30。夕食はカレーライス。夜23:00頃から明け方5:00近くまで風雨かなり強く、小屋を揺るがす音にしばし目覚めた。テントは1人500円、素泊まりは6300円であったが、小屋で大正解。1日の行動時間は14時間におよび、足はパンパン。疲労度強し。


8/21
5:00起床。朝食は昨日と同じチャーシューラーメンである。もう1日山を謳歌する予定の中山さんよりも一足早く、6:30に古屋、白川でヒュッテを後にした。小雨。東鎌尾根ルートで8:30?8:45西岳ヒュッテ。このあたりでは雨は本降りであった。10:12に大天井ヒュッテ到着、休憩する。古屋さんが小屋の主人に北鎌のコルに放置されていたゴミについて報告してくださった。来週行く予定なのでそのときに片付けるとのこと。小屋の主人も大変である。11:50大下りの頭で休憩、この頃には雨はほとんど止んでいた。12:40?12:55燕山荘。その後13:30にも第2ベンチで休憩をとって、14:45に中房温泉登山口に到着した。穂高で温泉に入り、御殿場を過ぎてから夕食休憩。20:40頃新松田着。
中山さん、古屋さんの経験の中から培われた知識と判断力。ただついて行くだけの自分であったが、学ぶことがたくさんあった。自分には無理だろうと思っていた北鎌尾根。お二人に感謝である。

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blogmaster 2008-7-17 21:00
日程:2008年7月17日(木)?22日(火)
山域:北アルプス 穂高・槍縦走
山行形態:縦走
メンバー及び役割:木村(CL、記録、食当)

7/18 上高地(8:00)?西穂山荘(11:30)(幕営)
7/19 西穂山荘(4:00)?ピラミッドピーク(5:30)?西穂高岳(6:10)?天狗岳(8:20)?ジャンダルム(10:30)
?奥穂高岳(12:20)?穂高岳山荘(13:20)幕営
7/20 穂高岳山荘(4:30)?涸沢岳(5:00)?北穂高岳(7:20)?南岳小屋(11:20)?南岳(12:10)?
中岳(13:20)?槍岳山荘(15:00)小屋泊
7/21 槍ヶ岳往復(5:00)?槍岳山荘(7:30)?水俣乗越(9:40)?西岳(11:15)?大天荘(15:20)幕営
7/22 大天荘(6:20)?大天井岳(6:25)?燕山荘(8:20)?合戦小屋(9:20)?中房温泉(11:00)

 7月17日夜、西新宿のバスターミナルから夜行バスに乗り上高地へ。7月18日6:00頃上高地に到着。天気は曇りであまり良くない。今日の行程は西穂山荘までなので、景気付けに朝飯にカツ丼を食べたりしてのんびり過ごす。8:00上高地を出発、ゆっくりと高度をかせいでいく。途中から雨が降ってきたのでカッパを着込むが。あまりの蒸し暑さに汗がダラダラ出る。休み休み歩いて11:30には西穂山荘に到着。山荘前でおばちゃんに桃をもらう。長い縦走のため乾物しか持ってないので非常にありがたい。テントを設営するが、雨が降っているので小屋の中で休憩させてもらう。ついでに夕食もつくらせてもらう。夕方には雨が晴れてきたので明日の長い行程に備え早めに就寝する。
 7月19日3時起床。慌ただしく朝食を食べ、まだ暗い中4時に出発する。天気は良さそうだ。西穂高岳へ向けての稜線をゆっくり登っていく。15分程登ると空が明るくなってきた。なんとも言えない色合いの夜明け空、遠い山並みが美しい。

ピラミッドピークを越え6:10には西穂高岳に到着した。岩は乾いて歩きやすい。夏の日差しがあまりにも熱いので半袖になってしまった。西穂から奥穂へ抜けるルートには3?4組のパーティーが歩いていた。みなさん荷物はそんなに大きくないので小屋泊まりのようである。私は5日分の食料とテントを背負ってるので重いし時々ザックが邪魔になる。ルートは明瞭であるが、たまに分からなくなると前後してる人に教えてもらったりして間違うことはなかった。アップダウンのある岩稜帯を何度も登り返すのはしんどかった。
遠くからみるとどこを登るのか分からない岩場も近づいてみると意外と登れる場所があるものだ。10:30にはジャンダルム到着。奥穂側から見ると砦のような感じで近づき難い印象だが、西穂側からは簡単に登れる。念願だったジャンの頂上に立つ。

すると向こうに槍ヶ岳までの稜線が見えた。まだまだ長い道程だ。ジャンダルムを巻くようにして最大の難所馬の背に挑戦。左右すっぱり切れ落ちていて少々怖いが登ってみると難しいことはなく慎重に乗越えた。さらに岩稜帯を少し登ればもうそこは奥穂高岳の山頂である。13:20穂高岳山荘へ慎重に下り今日の行程は終了。山荘ではヘリの離発着を見ることができた。北アルプスでは水は150?200円/ℓ、幕営代も500?600円するのでテント泊とはいえ意外とお金がかかる。
 7月20日3時起床。今日はあまり天気が良くない。小雨混じりのガスった天気だ。周囲が明るくなる4:30に出発。涸沢岳へ登ったあとは岩稜帯の下りになる。鎖や人工の足場などがあるのでそれを使って慎重に下る。岩が濡れているのでやや歩きにくい。しばらくすると登り返しになり疲れた頃に北穂高岳山頂に到着した。雨が降っており視界ゼロ、残念。ここまで昨日から同じルートを歩いてきた地元のおじさん、本当は槍まで行く予定だったが天気が悪いからここで今日はやめるという。こちらは長めの休憩の後、大キレットへ向けて歩き出した。今日は昨日に比べて行き違う人が圧倒的に多い。やはり人気ルートだからなのか。大キレットまでは鎖場ありの岩稜帯をどんどん下っていく。長谷川ピークのあたりで学生風集団に「すげー所だった!」と言われ期待して取付く。確かにすっぱり切れ落ちたヤセ尾根がある。でもちゃんと足場ができているのでそんなに怖くない。天気が良くて視界が開けてたらもっと怖いのかも。こんな感じで大キレットの難所はどこなのだろうと期待しながら歩いてるといつのまにか最低鞍部についてしまった。重荷で疲れた体をひきづってなんとか南岳小屋に到着する。さらに進んで中岳への登りでは部分的に雪渓が残っている場所があった。時折ライチョウが顔を見せ癒してくれる。

昨日の疲れもありノロノロと歩きようやく15:00に槍岳山荘に着くことができた。ところがこんな天気の悪い日なのにテント場は満杯だという。小屋に泊まるか殺生ヒュッテに行ってくれと言われ、小屋に素泊まりすることにする。小屋のほうはそんなに込んでなく広々と寝ることができた。1000円もする生ビールを飲んでしまい、快適に一夜を過ごせた。自炊室ではいろんな所から槍に登ってきた人と話をすることができて、たまには小屋泊もいいなと思った。
 7月21日少し寝過ごして日の出と共に起床。天気は良く、槍の穂先と御来光を拝む。朝飯前に山頂を往復して8月に計画している北鎌尾根を眺める。


小屋に戻りパスタの朝食をとり7:30には出発する。当初の予定では燕山荘まで行くことにしていたが、日程に余裕があるので大天井岳あたりまでかなと計画変更。東鎌尾根は初めて歩くが今日のように晴れた日は素晴らしい道だと思った。ずっと槍ヶ岳がみえるので北鎌尾根、北鎌沢、天上沢と来月のルートをじっくり眺める。

まだ雪渓が残っているが来月にはなくなっているだろう。水俣乗越まで一気に下り、西岳までつらい登り返しだ。西岳からは天気が良すぎるためか、やたらと喉が渇いて水をガブガブ飲んでしまった。強い陽射しにやられ思うように歩けない。途中貧乏沢の下降点を確認することができた。大天井ヒュッテは幕営できないので大天荘に行く。途中、枝沢から水が出ていたのでたくさん汲んでいく。15:20には小屋に着き、テントの中でのんびりする。人も少ないし、眺めも良いのでオススメの幕営地だ。

 7月22日最終日。今日は中房温泉に下るだけなのでのんびり出発。大天井岳から燕山荘まではアップダウンもなく快適な縦走路だ。中房温泉までは急な下り、合戦小屋で名物のスイカをお腹いっぱい食べてしまった。11:00に中房温泉に到着。天候にも恵まれ長い行程を無事最後まで終えることができ、とても充実した山行であった。
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